top of page

6月19日、オンラインレクチャー第2回、東辻賢治郎さんによる「レベッカ・ソルニットの著作と紀行文と地図 ―時空間と記述の関係について」を配信しました。

ソルニットの代表作『ウォークス』、そして思索的なエッセイ『迷うことについて』の翻訳者でもある東辻さんから、ソルニットの経歴や著作についてご紹介いただきました。

『ウォークス』は、「歩く」という根源的な行為をテーマに、人類学、社会学、ジェンダーなど多岐にわたる分野と時代を自由に横断していくかのような内容になっている。ソルニットは、自分自身の経験を通して語るので、読者はソルニットの生き方や存在感を感じ、生き生きとしたディテールに満ちた描写に魅了される。さまざまな分野を歩き回る、一人称的な書き方はトラベルライティングにも通じる展開がある。特にこれという結論があるような本ではないが、自由に広く深く、豊かな世界を描き出すことに成功している。

コロナ禍で、自由に出歩けない状況下でも、アメリカでは史上最大規模のデモがおきるなど、自由に歩くことの自由を勝ち取ってきた歴史を改めて想起させるという意味で、アクチュアリティのある本だと思う、とのことでした。

ーーーー

ソルニットは、作家、歴史家、アクティビストの側面をもち、フェミニズムから先住民の歴史、政治参加、社会変革、放浪、災害など多岐にわたるテーマをあつかうが、その著作は4つの分野に分けられる。

第1は歴史研究で、処女作『Savage Dreams』(邦訳未出)の再版序文では、ネバダ砂漠での核実験反対運動とヨセミテの先住民の問題を通じて、アメリカの別の姿を見つけたことが、作家としての原点だといっている。第2はフェミニズム、時事政治問題で、政治的な問題であっても、硬直化しない柔らかな語り口が魅力。第3は個人的、エッセイ的なもので、『迷うこと』もそのひとつ。第4は絵本、写真集、地図などのコラボレーションによる著作。『City of Women』では、ほぼ男性の名前がつけられた通りの名前を、ゆかりの女性の名前に置き換えたオルタナティブな地図を提案している。

ソルニットの文体は、旅をする主体が書き手となり、空間を移動しながら事実や現実に基づいて一人称で語るトラベルライティング、紀行文、旅行記といったものに近い。分野を越境していく知的な放浪者。ジャンルを超えて書こうとするとき、グローバルで深い時間軸を持って書こうとするときに有効な書き方ではないかと思う。自分の経験と考察を往復しながら書く『迷うことについて』は、世界から遠さ(未知のもの)がなくなっていくかのように見える限大において、「遠さ」を再発見する書き方ではないか。

ーーーーー

特集記事
最新記事
アーカイブ
タグから検索
まだタグはありません。
ソーシャルメディア
  • Facebook Basic Square
  • Twitter Basic Square
  • Google+ Basic Square
bottom of page