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NPO建築とアートの道場 2017年春連続レクチャー

『都市のコモンズの再構築』 

CURATION:塚本由晴 PRODUCE:長谷川逸子

◉全回予約制、参加費500円 

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■夏レクチャーシリーズ第1回 能作文徳「建築の物語的エコロジー」を実施しました。

 夏レクチャーシリーズ『都市におけるコモンズの再構築』第1回、能作文徳さんのレクチャー「建築の物語的エコロジー」を実施しました(6月6日火曜日)。

 能作文徳さんから始めにハーディンやオストロムらの「コモンズ(共有地)」理論の紹介がありました。都市における貧困や福祉の不足、宇沢弘文の社会的共通資産、エントロピー学派、エコロジー論との関係を通して、都市におけるコモンズを構築していくにあたって、建築家は資源のフリーライダーになってはいけないのではないか、地域コミュニティや自然エネルギーや物質循環の中で建築を考え、自然と共にある生活を作っていくべきではないかという提言がありました。続いて「高岡の住宅」やマニラの「バンブーシアター」を通して、モノが作るネットワークの可視化の方法の説明がありました。

 能作さんのプレゼンテーションの後、会場のレイアウトを円形に変更しディスカッションタイムに移行、まず塚本さんが、「成長という概念の変化をネットワークが豊かになるという言い方で表現できるのではないか。」「地球環境というような抽象論ではなく、もっと身の回りにあるスキルや振る舞いっていうところから組み立てていかないと生き生きとした話にならないんのではないか」という問いかけがありました。中川エリカさんは「能作さんの面白いところは、理論的に語っていながら、お米を食べたらホッとしてお米の袋を作ったみたいな感受性。」。「物語的エコロジーの面白さは、ハプニング的な出会いと生産力」(塚本)、「地域にあるモノでプロジェクトを進めていく時に限界を感じたことはないか。」(岩瀬)、「まずは知ることから始めないと。」(能作)、最後に長谷川から、「能作さんがやっていることは新しいもの新しいものとやってきた私たちの世代への批判でもあると思う。振り返ってみると日本における物質の循環は、随分と政治的なプロセスによって今の形になった。そういう社会に対して建築家は本当はもっと戦ってこなければならなかったのではないかとつくづく思う。色々といってきたつもりではあるけれど、なかなか建築家の言葉が社会に届かない。能作さんたち若い世代の建築家には声を大にしてどんどん発言して言ってほしいと思う」と、エール。

 レクチャー後はワンコイン懇親会でリラックスした雰囲気の中、10時過ぎまで話に花が咲きました。平日にも関わらず、多くの方にお運びいただき充実した議論になりました。ありがとうございました。

■『都市のコモンズの再構築』能作文徳さんの展覧会を終了しました。

 『都市のコモンズの再構築』能作文徳さんの展覧会を終了しました。高岡の住宅の模型と建設過程の動画、マニラのバンブーシアター模型、そしてバンブーシアターで屋根の覆いに用いた米袋、高岡の住宅の鬼瓦やタイルなの実物を展示していただきました。

■夏レクチャーシリーズ第2回tomito『半端の生態学』を開催しました。

 先週末、6月17日(土)tomito architectureのレクチャー『半端の生態学』を実施しました。

まず、tomitoから題名について「都市のコモンズを考える上で、週3日だけカフェを開く人、お料理のセミプロ、本業とは別の副業、三角に残された残地、と言った半端をつなぎ合わせて資源化することが一つの答えになるのではないか」。古民家の離れを借りた「横浜のアトリエ」では、季節の廻りや植栽、行事、人々が集まる程よいスケールなど建築以外の要素も含めて綿密にデザインされていることに触発されたそうです。元々の町の軸とJR線のずれからできてしまった三角残地に提案した「吉祥寺さんかく屋台」、築65年以上の二軒長屋を、「まち普請制度」の助成を受けながら市民自ら公共的なサービスを提供する場として改修した「CASACO」。改修のプロセスでは、地域の人たちとの繋がりを作るために「東ヶ丘新聞」運営メンバーで月1回発行したりワークショップをやったりしたこと。最初は無関心/警戒モードだった町の人たちが打ち解けて情報や人が集まるようになっていったこと。そうして集まった町の情報をまとめた「出来事の地図」でまちの資源を可視化したこと。最後に今進行中の「真鶴出版2号店プロジェクト」での取り組みをご紹介いただきました。

 前回と同じように車座になり議論に入りました。今回は、能作文徳さん、中川エリカさん、増田信吾さん、岩瀬諒子さんと全回の講師が揃い、活発な議論となりました。塚本由晴さんから「設計方法がまさにエコロジカルだけど、ものすごく時間と手間がかかる、生産性が低いのでは?」との問い。産業活動として建築を作ることと、エスノグラフィーとも言えるtomitoの方法論の間の葛藤、モニュメントとしての建築と非モニュメントの建築のギャップ、クリエイティビティの在り方、未完結な建築のあり方などが話題になりました。長谷川より「大島町絵本館の仕事はプログラムづくり、運営スタッフ養成から始まった。そのあと建築の設計も依頼を受けた。調査やプログラムから建築として立ち上げるためへのジャンプはなかなか自分の思うようにはいかないもの。みなさんが成長していく中で、どうやってこなしていくか、乞うご期待ですね。」とエールがありました。

 

 ワンコイン懇親会は、塚本さんからワインの差し入れもあり、今朝仕入れたばかりという新鮮な野菜を主菜に、tomitoさんの「吉祥寺さんかく屋台」を囲んでの楽しい会になりました。

■tomito展を28日まで開催しています。

 1階には「吉祥寺さんかく屋台」、2階には現在進行中の「真鶴出版2号店」プロジェクト、CASACO「出来事の地図」に関する展示があります。レクチャーで紹介された『真鶴植物秘伝帖』『美の基準』なども展示されています。

■「tomito の奇跡」!?

 昨日tomito architecture 展の撤収が無事に終わりました。展示室正面壁に鎮座していた真鶴のサボテンが、新しい芽を出していることがわかりました。どうやら展示期間中に発芽したようです。「tomito の奇跡」!? お写真はtomitoさんの提供です。

■中川エリカ『バラバラで動的な平衡』を開催しました。

 7月1日(土)中川エリカさんのレクチャー『バラバラで動的な平衡』を実施しました。

 まず、中川さんから「都市におけるコモンズの再構築というお題をいただいて、バラバラさが持つ開放感や快楽を表す建築、バラバラで開放的な集合を作り、目に見えないコモンズに構造を与えるような建築についてい語りたいと思った」と。西田司さんと一緒に設計した「ヨコハマアパートメント」の半外部の広場で今も継続して起こっている様々なアクティビティ、ゆったりとした敷地の別荘地で施主とのワークショップで作っていった「村、その地図の描き方」、各階の平面形が違うためにあちこちにテラスや階段がある「コーポラティブガーデン@ゴタンダ」の紹介がありました。単独作品として、「ビッグテーブル」によって乱雑さを作り出した『ライゾマティクス新オフィス移転計画』、既存の敷地に残る材料と新しい材料を重ねるように作った『桃山ハウス』の話をしていただきました。これらのプロジェクトに共通するのは、人間がいることで成立するバラバラで開放的な集合、作られた時だけではなくずっと継続していく「庭」のような建築であるということでした。

 ディスカッションでは、塚本さんから「中川さんはどうして空間」という言葉を使わないの?」と質問があり、「内と外の境界という概念がすでに空間を内包している。境界が開かれるという時の空間ではなく、いろんなことを受け入れられる開放性を作りたいから。空間は人がいなくても成り立ってしまう。だけど、人間も含めてできる環境を考えたいから。」と中川さん。その他、塚本さんから「20世紀の産業化された建築が暮らしのエコロジーを改変するために使われちゃったな、という反省がある。暮らしのエコロジーの歴史を考えることが必要ではないか。」、中川「地域の人たちの共同意識に触れるような建築が作れると、その地域の人々の生活や感性が変わっていくのではないか」、門脇耕三さん「桃山ハウス共感できる一方で、快楽的で健康的だけど、極めてプライベートな感じがする。街並み、建築の社会性が見えにくい。」、中川「屋根に変わる構えがないのか、と言われると今はないが、人間がいることによってできる構えができるといいなと思う」など。長谷川「桃山ハウスは庭的な家だなと思った。ものが植物のように生えて雑然とある。庭というのは建築と一緒に同じレベルでで作られるもの。それだけでは開かれたものとは見えない。私は開かれた場所を作りたいと原っぱのように作りたいとやってきた。バラバラさを継続していく難しさっていうのはずっとありますね。」。そのほかにも、藤原徹平さん、西田司さん、能作文徳さん、トミト冨永美保さん、伊藤孝仁さんたちから活発な意見が出ました。

 当日は予想を上回る大勢の方にお運びいただきありがとうございました。今シリーズ恒例となったワンコイン懇親会も多くの方に参加していただきました。

■中川エリカ作品展を開催しています。

中川エリカさんのレクチャー『バラバラで動的な平衡』の展覧会を7月12日(水)まで開催しています。いつもできるだけ大きな模型でスタディをするという中川さん。1階2階に、住宅建築賞金賞の桃山ハウスをはじめとするたくさんの模型を運び込んでいただきました。2階にはパネル展示とビデオ展示もあります。短い期間ですが、どうぞお運びください。

■増田信吾+大坪克亘レクチャー「『空間』としての建築への違和感」を開催しました。

 先週土曜日(7/15)に、 夏レクチャーシリーズ『都市におけるコモンズの再構築』第4回、増田信吾+大坪克亘レクチャー「『空間』としての建築への違和感」を開催しました。増田信吾さんから、エキスパンドメタルだけで自立させた塀「ウチミチニワマチ」、2階建のコンクリート造アパート改修で、既存サッシュを全部外し、庭との間に3層分の高さの窓を建てた「躯体の窓」、雪国の民家の高い基礎を利用し床レベルをGLまで下げる床下改修(?!)「リビングプール」、1970年代プレハブ住宅の母屋と離れの間に5.5mの高さの薄い屋根をかけた「始めの屋根」、そして、場を作り出すオブジェクトの力を見せる古神道の磐座調査、最後に現在進行中の「北側のセカンドハウス」についての解説がありました。いずれもエキスパンドメタルの素材感への眼差しや、庭を少し明るくする窓、光を映す北側の斜壁などといった作り込みの繊細さと、内装は施主の方が詳しいから任せた、初期のプレハブ住宅は十分機能を満たしているからそのままでいい、僕たちは施主ができない事だけをするという潔さが印象的でした。

 ディスカッションでは、こうした増田+大坪のプロジェクトがどのように「コモンズの再構築」に関係してくるのかという問いが焦点になりました。塚本由晴さん「場は時間や自然といったものとの関係性でできているから動かせないし生命体のように変容していくもの。空間は方法的で移動可能で世界中に拡張可能なので、20世紀に爆発的に支持されたのではないかと。コモンズを考える時、もう一度場の方に議論を持っていく必要があるのではないか」、能作文徳さん「場を作り出すオブジェクトの繊細な作り込みで周りの場が鮮やかに変わっていく面白さが増田大坪の仕事にはある」、藤原「切り分け方がうまい。切り分けてすごく繊細にスケールなどを捜査してここに場がありました、というフィクションを作り出す。機能はすでに満ち足りた現代社会に『場』が持ち込まれるとき、それがコモンズの再構築になっていく可能性がある」、長谷川「光とか空気の動きとか、建築というよりは装置を作っているようなデリケートさは、日本の建築を見直しこれからの建築を考えていく方向につながっていると思う」、塚本「ファクトに対する真摯さがかっこいい。意味に拘泥せず、ものに集中しているから客観的でデリケートな設計になる」など。そのほかにも、中川エリカさん、冨永美保さんから質問や感想をいただきました。多くの方にお運びいただきありがとうございました。充実した議論になったかと思います。

 今シリーズ恒例のワンコイン懇親会へも多くの方にご参加いただきました。ありがとうございました。次回は7月29日、岩瀬諒子さん「細部のある土木」です。夏レクチャー最終回となります、どうぞ奮ってご参加ください。

■増田信吾+大坪克亘作品展を開催しています。

 増田信吾+大坪克亘作品展を7月26日(水)まで開催しています。まさに今設計が進行しているプロジェクト「北側のセカンドハウス」のスタディ経過のわかる模型とCGを展示しています。是非お運びください。

■岩瀬諒子レクチャー「細部のある土木」を開催しました。

 先週土曜日(7/29)に、 夏レクチャーシリーズ『都市におけるコモンズの再構築』最終回、岩瀬諒子レクチャー「細部のある土木」を開催しました。岩瀬さんから、景観研究室にいた修士時代からマテリアルやテクスチャーの研究をしていたこと、阪急電鉄の高架事業に携わり何もできなかった悔しさ、スイスで1年間生活していた時、ごく普通にオフィスのお昼休みに川に泳ぎに行くなどインフラと生活習慣の密接な関係から文化を生み出して行くようなインフラを作りたいと思ったことなどのお話を前段としていただきました。レクチャーは3400㎡もの木津川遊歩道プロジェクト「トコトコだんだん」のコンペから竣工までの間に起こった思いがけない出来事や乗り越えていった経過を丁寧に説明するものでした。遊歩道のほとんどを平面も立面も同じポーラスコンクリートで仕上げ、いずれ「だんだん、畑になる」ことを期待してポーラスコンクリートを積層し、180mm(1段)、360(1段)、560(1段)というあえて座りやすい高さをちょっと外したモデュールを選んだこと、吊り橋に使われるワイヤーを手すりに用いる、既製品だが問題の多いユニバーサルゲートをやめるためにチェーンポールを開発したこと、メンテナンスへの意識を持ってもらうために散水栓を地上に出したことなど、細部にわたって素材や器具を開発した経緯の説明がありました。人に寄り添うことと、人に寄り添いずぎると「土木の清々しさ」がなくなってしまう、もてなしすぎず、一人一人の自発的な振る舞いを引き出すためのバランスをどう取るか苦心を重ねたということでした。最後に学生たちから、調査と4冊の絵本「堤防と地層」、「僕の『壁』」、「空が大きくなりました」、「影のクイズ」の紹介がありました。

 ディスカッションでは、塚本由晴さんから「自然資源が少ない都市では、水という資源へのアクセシビリティを高めるプロジェクト」と評価があり、香川貴範さんから「もう少し建築的なスケールを入れていってもいいのではないか」。藤村龍至さんから「たまたま恵まれた条件のプロジェクトでした、で終わらないように、NPOや民間の経済も取り入れた循環を作って行く必要がある」、中川エリカさんの「どこまで関わるか、手離れのタイミングをどのように考えているのか」という問いには「NPOに運営面を任せられるようにしたい」とのこと。増田信吾さんからは「遊歩道ではあるけど一緒に防潮堤としてのスペックが上がるような提案を見たい。高くぶ厚くしていくというのは違う、ああいう断面と平面でやっていくと新しい風景を作れるとか。」、長谷川「土木の素材をこれだけ自分なりにデザインして作っているのはわかるが、あのインターロッキングは良くない。素材をもっと追求すればだんだんを作るのでももう少しデリケートになるはず」、寺田真理子さんからは「ずっとインフラと『私』といっていて、『公共空間』とは言わないのが面白いと思った。スイスでの経験、自分の身体感覚を持って構築しているところがいい」、飯尾次郎さんから「シリーズを通して、20世紀的なフォルマリズムからどう解放されていくか、いろんなかたちで出てきていると感じる。大きな流れを共有していると思う」と。そのほかにも、能作文徳さん、tomitoの伊藤孝仁さん、冨永美保さんと、今回のレクチャーシリーズの講師が全員集まって、最終回にふさわしい白熱した議論になりました。

■岩瀬諒子+東京藝術大学中山研究室合同展を開催しています。

7月29日(土)から8月9日(水)まで岩瀬諒子+東京藝術大学中山研究室合同展を開催しています。木津川遊歩道、「トコトコだんだん」の模型及びこのプロジェクトのために開発した素材、中山研究室メンバーによる調査と絵本を合わせて展示しております。

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