藤森泰司さんのレクチャーを開催しました。
新春レクチャーシリーズ第2回、藤森泰司さん「道具の先へ」を開催しました。
藤森さんのプレゼンテーションでは、家具に興味を持つきっかけであったハンス・ウェグナー「The Bull chair」の実測授業、大橋晃朗さんのことにはじまり、作家性と商品化のジレンマ、日常生活の中に入っていき、使われていく家具のあり方、それぞれの素材や作り方、スタッキングなど使い方の工夫を、たわむ座面「Flat chair」や、合板の薄い板を貼り合わせて作ったフラッシュ構造の「DILL」、成形合板を貼り合わせた柔らかい座りごごちの「Cappio」など代表的な作品をご紹介いただきました。建築家との協働でもよく知られている藤森さんですが、大空間の天津図書館(山本理顕設計工場)や信毎メディアガーデン(伊東豊雄建築設計事務所)での取り組み、そして地域と協働する新しい取り組みとして、奈良県吉野町の地域産材を使い、中学校(吉野町立吉野中学校)の入学時に机を自分で組み立て、3年間使って卒業時に持ち帰れるというプロジェクト「地域産材で作る自分で組み立てるつくえ」をご紹介いただきました。このプロジェクトは5年を経てまだ継続してるそうです。
ディスカッションには藤原徹平さん、田口知子さん、多羅尾直子さん、町田敦さん他、設計事務所や家具製作の方々にもご参加いただきました。長谷川より、篠原研究室時代に大橋晃朗さんが「白の家」などの代表作で果たした役割、強烈な作家性と持つ篠原一男との関係、多木浩二さんとの関係などについて話がありました。相互に強烈な作家性を持った建築家と家具デザイナーの協働が非常に難しかった世代と、藤森さん(の世代)が開いている新しい建築家との協働のあり方の比較、建築家の視野の広がりが少ないかもしれないという危機感、商品-プロダクトの文脈だけで家具を考えると「もの」そのものだけに集中してしまい、一番大事な空間や使う人との関係が希薄になってしまうこと、などについて議論になりました。