2月17日(土)新春企画『建築批評会』第二部①畝森泰行「スモールハウス」
第2部 批評会
大変遅くなりましたが新春企画『建築批評会』第2部批評会の、①畝森泰行「スモールハウス」のご報告をします。2部は、家成俊勝さんが司会進行をしてくださいました。
まずは畝森さん『small house』から。家成さんから「ちゃんとリングに乗ってグローブをはめて打ち合っているオーソドックスな印象、テレビの開発者の間ではベゼルの薄さで0.1mmのしのぎあいがある。建築でも同じようなしのぎあいが王道としてある。そのさきにどんな未来があるのか?」と。
畝森さん、大きいか小さいか厚いか薄いかといったことしかできなかったということもあるが、それだけに特化することで、周辺状況に左右されない建築の一般的な作り方を考えられるのではないかと思った、シンプルにオーソドックスに追求することで空間の豊かさ多様さをつくれるのではないか。
石上さん、手すり一つとっても「攻めてるな」。僕も攻めるところは攻めるほうだけど(会場から笑)。あのスケールでできるのかできないのかのギリギリを追及することが住み心地に直結する。
畝森さん、ヒューマンなスケールということはすごく考えた。70mmの床の厚みがちょっとでも暑くなると上下移動の感覚が相当変わるといったことは原寸でスタディを繰り返した。この規模だと1、2mmの違いがリアルに住み心地や空間の広さ感覚に影響する。身体性から都市までの振れ幅の中で設計を考えたい。
大西さん、街の中でのすっとした立ち方がとてもいい。プロポーションをデリケートに操作しているけれど、もっと現実的な快適さ、体感する空間の大きさ、有機的なつながりからの視点があるとより快適な空間になるかもしれない。
百田さん、僕らはつい足し算してしまう方だが、畝森さんは必要なものに対する集中力がすごいと思った。でも壁や床、窓といったモノといった「必要なもの」、寝る食べるといった生活の行為のつながりでもっと考えられることがあるのではないか。
畝森、現代の住宅を考えるとき、現代の暮らし方が確定的ではない、将来的に変わることを含んだ住宅を考えないといけないと思う。最小限にすることで、いろんな暮らし方を許容できるようにする。
石上さん、建築の形式をどこまで守るか。柱、梁、窓のあり方といった形式を逸脱しないで空間の可能性を作っていけるかというところに感動があるという面もある。ミースの一連の建築の中でも、感動するものもしないものもある。その境界がどこにあるのか、生活とは関係ないのかもしれないし、興味がある。家成、生きていく上では重大ではなくても、ほんのちょっとしたことで空間が違うものになるという境界はどこにあるか、畝森さんのはその点すごくいい。
長谷川、構造の形式と社会のあり方はいつもオーバーラップしていある。私たちの世代も軽く薄くといったことをやってきた。若い世代も畝森さんのやっていることとつながっているように思う。
門脇耕三さん、畝森さんのやっていることは長谷川豪さんのやっていることに近い。建築の各部寸法は人間の暮らしとは無関係に、自律的に追及することができる。それが人間生活と出会った時に思いがけない作用をして、生活を一気に変えることもある。そういう期待をしているのではないか。山手通りの家は嫌な感じがした。玄関の寸法が低いことを低いといっているような感じがして、嫌な感じがした。住宅としてそれでいいのかと。西沢さんの森山邸にいった時に、感動したが、プロポーションをみるとあの形式の中でありえるプロポーションがそこに全部あって、ドリルを解いているみたいに感じた。それが完璧すぎると監獄にいるように窮屈だなと思う。直島のフェリーターミナルも同じように感じる。気持ちいいんだけれども窮屈な感じ。
大西さん、ハウスAは全然違うと思う。
畝森さん、ハウスAはこの間みました。プロポーションとか枠組みっていう風には感じなかった。純粋に快楽的な建築があって、箱がずれているという形式だとか天井高をつくる構造的な枠組みはあんまり関係がない。作る上では重要だとしてもできたものはそれと全然違うものになっていおる。あれは、ぼくのスモールハウスとは全然違う。スモールハウスはまだ作り方の手順が足りないのだと思う。周りからまずヴォリュームを決めて分けていく、それをどれだけ薄くするかという手順が一方向だった。ハウスAは手順が違う、ヴォリュームを作って箱を作ったけれど、それを窓を大きくあけたり箱同士をどうつないでいくかで、それを壊していく。箱自体の形式がどうでもよくなるようなことをやっているのではないかと感じた。僕の次の課題としては一方向的な手順を考え直すことだと思う。
石上さん、たぶん、西沢立衛さんが箱にあんまり可能性を感じなくなったのがハウスAではないかと思う。箱にも限界があってその外側に可能性を見て作ったように思う。プロポーションや箱と箱のつなぎ方が曖昧で、明確な答えを求めていないようなきがする。それによってらふなような、閉じているような、開いているような不思議な感覚がする。
家成、スモールハウスは天井高をみても2階が高くて、その上下のスペアルームや玄関は低いという順番で、クライマックス感があって。それもハマるよな、と思いましたね。