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新春企画『建築批評会』レポート01


 2月17日(土)に、新春企画『建築批評会』を開催しました。ご報告が遅れました。密度の高い議論もあり、まずは第一部のプレゼンテーションのご報告をいたします。

 当日はキュレーターの西沢立衛さんがインフルエンザで欠席というハプニングがありましたが、第1部は各作品のプレゼンテーション、そして第2部が相互批評の会という予定通りの構成でした。

 第一部のプレゼンテーションは見学会の順番で、石上純也さんによる宇部の「house & restaurant」から始まりました。クライアントは20代後半だった石上さんの最初のプロジェクト(レストランのテーブル)のクライアントだった。最初のプロジェクトからお互いに時を経て、時間の蓄積を感じられるような空間を目ざそうと。穴を掘ってコンクリートを流し屋根にも厚みを取るところとごく薄くする部分を作り「重いような軽いような空間」をつくる。まずは模型をフォトスキャンして3D化することからはじめた。壁式構造。小さな重機を使い手で掘る。墨出しができないので、光測量したデータを現場でi-padで掘るべきところを確認しながら作業を進めた。場所によって地面の状態が異なり、赤い土、砂利が多いところなどいろんな状態があり、それがコンクリート躯体に写し取られている。コンクリートを流すときは継ぎ目ができないように8時間かけて一発で打ち上げた。次にそのコンクリートを掘り出していった。今だいたい堀だしたところ。予定調和にならないような作り方をめざしている。6月ごろにオープンを目指している。

 次にドットアーキテクツ家成俊勝さんによる小豆島の「馬木キャンプ」。小豆島は全国に先んじて少子高齢化が進んでしまっている地域で、島の人たちはなんとかしようといろんな活動をしてきた。そうした活動の延長に2013年の瀬戸内国際芸術祭で、馬木キャンプは人と人とつなぐベースキャンプのような仮設の場所として計画が始まった。敷地の背後にある楠とお寺がある美しい風景をできるだけ邪魔しないようにしたかった。阪神淡路大震災で、住んでいた家が全壊判定を受けた。その時に自分たちで家を建てられる仕組みを作りたいと思った。自力建設できる構造方式を考案し、それを馬木キャンプで使った。既存の植栽をできるだけ残すように建物を配置した。屋根を五つに分節して、集落の中で圧迫感のないヴォリュームをめざした。建設は基礎の配筋から地元の人たちと一緒に打った。基礎の上にボイド管を立ててコンクリートを流し込んだ短い柱を作り、そこに柱を差し込む。脚立だけで上棟できるシステム。木をまっすぐ切る、穴をまっすぐ開けてボルトを締める、釘を打つという3つの技術があれば誰でも上棟できるシステム。現場中から近所の人たちが遊びに来たり手伝ってくれたりして竣工した。建物を地域の人たちが使っていけるようにヤギを飼ったり、野菜を持ち寄って調理したり、ラジオ局をつくったり、地域の古写真のデジタルアーカイブ化、映画を作ったりといろんな活動を地域の人たちとやってきた。これから馬木キャンプの別の使い方なのか畳み方なのか、を考えていく。

 o+hは東京の下町の方に立つ処女作、「二重螺旋の家」。2本のアプローチがある旗竿敷地で、実際に建てられるのは6m×7mくらいの小さな敷地だった。真ん中に四角いコアがあり、路地が伸びてそのままコアに巻き上がっていくような住宅を考えた。周りを囲まれているので実際はあまり外観がない家ではないかと考えている。ぐるぐる廊下を回って生活する。まちの中の地面が見えたり、他の家の屋根が見えたり、町といろんなつながり方をする。

 暮らして行く中で、屋外階段を持つことで中があったり外があったりするのが面白いのではないかと作ったのが「中目黒の家」。家の中の経路を長くして、いろんな体験が生まれて住む人の体に染み付いていくような家。

 一番新しい住宅は3方を道路に囲まれている。さらにもう一本道を通して、4方を道路に囲まれているような構成にした。普段使う玄関の他に屋外階段から直接半屋外の踊り場に上がるなど、7つの玄関があるような家になっている。ガラスも何もはまっていない大きな開口をもつ壁の内側を屋外階段が上がって行く。

「まちとつながる経験」というテーマで住宅を3つつくった。住宅の中で過ごすだけではなく、学校に行く仕事に行く買い物に行くということも住むことの一部だと思う。それを繋いで行くことができないかと思っている。

 最後に畝森さんが独立して最初に作った『small house』。30代半ばのクライアントはご夫婦と小さなお子さんと3人家族。空襲を免れた、道幅も細く宅地割りも小さい住宅密集地にある。日当たりも風通りもよくない。10坪ほどの土地で、普通に平面を大きく取るとますますせまくるしくなるので、天空率を使って、平面は4×4mに抑え、地上9m、半地下を入れると10mの高さを持つ5層の住宅とした。空地を周りに作ることで、周辺の環境もよくなる。平面の1/4近くを占める螺旋階段で半地下から屋上までをつないでいて、縦に伸びるワンルームのような感じ。2階は大きな窓と、幅2m高さ3mの外壁のように見える扉があり、この扉が50cm開くだけで、ふわっと風や光が入ってくる。中なんだけれども、屋外のような開放性が感じられる。町に対するアクションとしてもこの扉が開くことで、中の気配が町に伝わるようにした。構造はできるだけミニマルな構造を目指した。L型アングルを組み合わせた柱を鉄板のブレースで囲んで壁で剛性を取っている。そのため空間を切り分ける床を70mmとごく薄くすることができた。

西沢さんとご登壇者の皆さんは『建築批評会』に先立ち、1月にお互いの作品をめぐる見学会を実施していました。それぞれ建築創造に取り組む建築家同士で批評することで、建築を豊かにしようという西沢さんの意図は十分に実現されたでしょうか、次回は批評会のレポートをします。

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